繰り下がりの計算が不安定

 「繰り上がりの計算が不安定」で述べたのと同じように、繰り下がりのある引き算の答えが不安定な子どもがいます。

 算数が苦手でない子どもは、10の分解と数の合成で答え出すことを繰り返している間に、数的事実の自動化(10の分解や数の合成のプロセスがなくても瞬時に答えが出せるようになる)がおこるので、記憶系からの答えの検索がうまくいかなかった場合でも、10の分解と数の合成のプロセスに戻って答えを導くことができます。

 しかし、算数障害がいの子どもは、数をまとまりとして捉えることが苦手で10の分解と数の合成が定着しにくいので、演算数値と答えを機械的に暗記せざるをえず不安定になっていると考えられます。

具体的な支援の方法

ひき算ボックス
       写真1

step1 10の分解カードによる支援

 

 繰り下がりのある引き算を安定させるためにまず必要なことは、10の分解をしっかりと定着させることです。表と裏を合わせて10になる全ての組み合わせのカードを作っておきます。(名刺用の両面印刷用紙を使うと簡単にできます。)


 カードをよく混ぜ、1枚ずつカードを子どもに見せていきます。カードを見せたときに「表と裏を合わせて10になります。表が7なので裏はいくら?」と言うふうに尋ね。裏を見せて答えが合っているか確認します。この課題を続けることで、量のイメージに基づいた10の分解がスムーズにいくようにします。

 数の合成の支援方法は、「足し算や引き算で指を使ってしまう」のstage3 「数の合成分解カードによる支援」をご覧ください。

あわせて10にしましょう
図1 10をわけましょう
図2 10をわけましょう
図2 10をわけましょう
図3 10からのひきざん
図3 10からのひきざん

step2 支援ソフト「10をわけましょう」「10からのひきざん」による支援

 

 学習支援ソフト「さんすうベーシック」「さんすうベーシックプラス」の『わけましょう』に入っている「10をわけましょう」の課題で、10を分けた数を覚え再生する課題を繰り返しおこなうことで、10の分解を定着させていきます。

 あわせて「さんすうベーシック」「さんすうベーシックプラス」の『くりさがりひっ算きほん』に入っている「10からのひきざん」の課題を繰り返すことで、繰り下がりの引き算に必要な10からの引き算の自動化を量に基づいて進めていきます。

 

 


写真3
        写真2
       写真3
       写真3

step3 繰り下がりボードによる支援

 

 繰り下がりのある引き算の問題を筆算の形式で出します。

 「繰り下がりボード」(「繰り上がりボード」と併用)を使い、まず一のへやの被減数から減数が引けないことを示します。写真の場合「2から4は引けません」と声かけをします。次に、十のまとまりを一のへやに移動させるようにし、繰り下がりのイメージが持てるようにし、「10から4は引けるよね」と声をかけ数図ブロック10個から4個を取り去ってもらいます。残りの6と2を合わせて答えが8になることを示します。


繰り上がり繰り下がり用ボードの作り方は、こちら

        図 4
        図 4
        図 5
        図 5

step4  支援ソフト「くりさがりひっ算きほん」による支援

 

 「くりさがりひっ算きほん」の課題は、画面下側にドットが表示されていて、十のまとまりが一の部屋に移動するようすがアニメーションで表現されているので、繰り下がりのイメージや、十の分解と数の合成のイメージが持てるようになっています。機械的に暗記して答えるのではなく、10の分解と数の合成のようすをみて答えを出すことにより、脳内に繰り下がりの量的イメージを作るようにします。


       図 6
       図 6

step5  支援プリント「くりさがりひっ算きほん」による支援

 

 さんすうベーシック・さんすうベーシックプラスの「プリントくりさがり」で作成したプリントは、十のまとまりを移動させることと数を合成することが要求されるプリントです。

 このプリントをすることで、単純な機械的暗記ではなく、10の分解と数の合成を繰り返すプロセスを通した数的事実の自動化がおこるようにしていきます。